シフト調整は、店長にとって最も神経を使う業務のひとつです。
しかし、多くのトラブルは「スタッフ同士の問題」ではなく、“店長側の調整方法”が原因で起きています。
その場しのぎや曖昧な対応を続けると、不公平感が蓄積し、ベテランの離脱や現場の不満につながります。
この記事では、店長がやってはいけないシフト調整のNG対応と、正しい改善手順を具体的に解説します。
なぜ“シフト調整”はトラブルの温床になるのか
店長とスタッフで期待値がズレる
シフト調整がトラブルになりやすい最大の理由は、店長とスタッフの「期待値のズレ」です。店長は“店を回すための最適解”を考えて調整しますが、スタッフは“自分の都合がどれだけ通るか”を基準に判断します。この価値観の違いをすり合わせないまま調整すると、「聞いていた話と違う」「あの人は優遇されている」といった不満が生まれます。さらに、スタッフ側は自分の影響範囲だけで判断しがちですが、店長は全体最適を見て動いているため、互いの視点が噛み合いにくい構造です。このズレが積み重なることで、調整のたびに摩擦が生まれてしまいます。
調整の基準が曖昧
調整のルールが曖昧な店ほど、トラブルは増えます。「なんとなくOKした」「今回だけは特別」など、その場の判断で対応すると、前例となってしまい、次回以降も同じ要求が続きます。スタッフ同士の比較が始まり、「あの人は許されたのに自分はダメなのか」という不満につながるケースも多いです。基準がない状態で調整するのは、店長にとっても大きな負担となり、毎回ゼロから考えるため作業時間が無駄に増えてしまいます。曖昧な調整は、その場では丸く収まったように見えても、必ず後で問題を大きくします。
属人的に対応してしまう構造的問題
店長の判断に依存した調整は、必ず属人化につながります。「店長だから分かる判断」で対応してしまうと、他のスタッフが代わりに調整できず、店長の負担が一方的に増えます。さらに、スタッフも「店長ならなんとかしてくれる」と期待するようになり、店長の調整スキルに依存した脆弱な運用になります。この状態では、店長が休む・異動する・退職するなどの状況に耐えられません。属人的な対応は、短期的には楽に見えても、長期的には現場の安定性を奪う最も危険な運用です。
NG対応①「その場の雰囲気でOKする」
理由を聞いてしまうと公平性が崩れる
シフト調整の際に、スタッフの「休みたい理由」を深掘りすると、店長の判断がブレやすくなります。「家の用事」「友達と約束」「勉強したい」など、理由には優劣をつけられないものが多いため、どこまでを認めるかの線引きが曖昧になります。結果として、“説明が上手い人だけ希望が通る” “遠慮する人が損をする” といった不公平が発生します。また、一度理由を基準に判断すると、次回以降も「前はOKしてくれた」という前例が残り、店長が断りにくくなる負のサイクルに陥ります。理由を基準に判断し始めた瞬間に、公平性は崩れ始めます。
その時は良くても翌月にツケが来る
雰囲気で「いいよ、今回は休んで」と受け入れてしまうと、翌月以降にツケが回ってきます。理由は、スタッフが“希望は通るもの”という認識を持ってしまうためです。結果として、希望休がエスカレートし、必要人数を揃えにくくなり、シフト全体が崩れやすくなります。さらに、「前はOKだったのに今回はダメなの?」という不満が生まれ、店長への信頼が揺らぎます。その場しのぎで丸く収めようとした対応は、一時的には楽でも、長期的には負担とトラブルを増やすだけです。調整は一貫した基準で行わないと、翌月以降の運営が確実に苦しくなります。
NG対応②「無理な穴埋めを“優しい人”に頼む」
戦力が固定化し、離脱リスクが高まる
「ごめん、この日だけお願い…」と、優しい性格のスタッフに無理な穴埋めを頼むのは一見便利なようで、長期的には非常に危険な対応です。優しい人・責任感の強い人に負担が偏ると、その人が実質的に“店を支えるコアメンバー”になってしまい、戦力が固定化します。固定化された戦力は、休めない・抜けられない状態になり、心理的負担が徐々に積み重なります。最終的には疲弊し、離職リスクが大幅に高まります。店は回っているように見えても、基盤は脆く、誰か一人が離脱した瞬間に崩壊する恐れがあります。
本人は“頼られてる”と感じにくい
穴埋めを依頼され続けるスタッフが、必ずしも“頼られている”と感じているとは限りません。むしろ、「断れないから押し付けられている」「自分ばかり負担が大きい」と感じているケースが多いです。特に、優しい性格のスタッフほど本音を言わず、無理を重ねてしまいやすい傾向があります。その結果、店長が気づかないところで不満や疲労が蓄積し、突然の離職につながることも珍しくありません。依頼する側には悪意がなくても、受ける側は重荷として感じていることが多い点に注意が必要です。
NG対応③「LINE個別で調整を進める」
情報が分断され店長の負担が増える
LINEなどの個別チャットでシフト調整を行うと、情報が分断され、店長の負担が一気に増えます。「誰に何を伝えたか」「どの希望を承認したか」「どの変更が確定なのか」を複数のトークルームで管理しなければならず、漏れや矛盾が発生しやすくなります。さらに、店長自身が“情報のハブ”となることで、一人で全てを把握し続ける必要があり、属人化が加速します。個別連絡はその場では便利に見えますが、長期的には最も時間を奪う調整方法です。
後から矛盾が発生して揉める
個別メッセージで調整を進めると、「言った/言ってない」「聞いてない」「あの人はOKなのに自分はダメなの?」といった矛盾が生まれやすくなります。スタッフ全員が状況を共有できないため、店長の対応が不公平に見えてしまい、トラブルの火種になります。特に、変更が多い月は、店長自身もどの情報が最新なのか整理しにくくなり、ミスの連鎖が起こりやすくなります。調整は“個別ではなく全員が見える場で行う”ことが基本であり、LINE個別調整は避けるべき運用です。
NG対応④「希望休を全て受け入れる」
公平性が崩壊しベテラン依存が加速
希望休をすべて受け入れてしまうと、一見スタッフに優しい運用に見えますが、店全体としては最も不公平を生む危険な対応です。休み希望が多いスタッフほどシフトが軽くなり、控えめなスタッフほど穴埋めに回されるため、負担が偏ります。さらに、難しいポジションやピーク帯はベテランが担当することになり、戦力が固定化され、ベテラン依存が急速に進みます。この状態が続くと、ベテランが疲弊し、新人は育たず、店舗の運営力がどんどん弱くなります。希望休の“全承認”は、短期的には楽でも、長期的に見れば店を崩壊させる最も危険な選択です。
抜け道を作ると後戻りできない
一度「希望休は全部通る」という前例を作ってしまうと、後から制限をかけるのが極めて難しくなります。スタッフは「前はOKだったのに今回はダメなの?」と感じ、店長の説明が受け入れられにくくなります。また、希望休の提出数がエスカレートし、店長が調整できる枠がどんどん減り、毎月シフトがギリギリになる悪循環が生まれます。抜け道を作ると、それが“当然の権利”として広がってしまい、運用を戻そうにも反発が強くなります。最初から明確なルールを作り、例外を作らないことが、公平性と安定運用の前提条件です。
NG対応⑤「“なんとかする”と言ってしまう」
その場しのぎが慢性化する
シフト調整でよくあるNG対応が、スタッフからの相談に対して「なんとかするよ」と返してしまうことです。一見ポジティブで安心させる言葉に見えますが、実際には店長が全てを背負い込むだけの危険な対応です。この一言によって、スタッフは「店長が調整してくれるのが当たり前」と感じるようになり、希望休や急な変更を気軽に依頼するようになります。すると、店長だけが常に調整の矢面に立ち、その場しのぎの対応が慢性化します。短期的には波風が立たないように見えても、長期的には店長の負担が膨れあがり、現場の仕組みそのものを弱体化させる原因になります。
根本原因が解決されず毎月苦しむ
「なんとかする」という言葉で調整を片付けると、問題の根本原因が永遠に解決されません。必要人数が足りていないのか、希望休のバランスが悪いのか、固定シフトに偏りがあるのか——本来見直すべき構造が放置され、毎月同じ問題が繰り返されます。結果として、店長は「毎月ギリギリのシフト」「突発休みに弱い運用」「一部の人に負担が集中する」といった状況から抜け出せなくなります。また、店長の“何とかします文化”に依存した現場は、店長が休む・異動する・退職するなどの変化にまったく耐えられません。調整は勘や気合いではなく、基準と仕組みで行うべきものです。
ではどうすべきか?“正しい調整基準”の作り方
店としての「優先順位」を明文化する
シフト調整の混乱を防ぐために最も重要なのは、「店としての優先順位」を明確にしておくことです。たとえば、①必要人数を満たす、②戦力バランスを確保する、③希望休の公平性を守る、といった優先順位を決めておけば、判断に迷う場面が大幅に減ります。優先順位が明文化されていると、スタッフにも説明しやすく、「今回は優先順位②を守るため対応が難しい」といった合理的なコミュニケーションができるようになります。これにより、感情ではなく“店としての基準”で調整が行えるようになります。
ルールを全員に共有し、例外をつくらない
調整基準を作っただけでは効果が不十分で、必ず全員に共有し、例外をつくらないことが重要です。例外を認めると、その瞬間に基準は崩れ、前例化してしまいます。「今回は特別」「この人は事情があるから」という対応が積み重なると、店長の判断がブレて見え、不公平感と不信感につながります。共有すべき内容は、希望休の扱い方、固定シフトの考え方、調整が必要なときの手順など、店として守るべき運用ルールです。全員が同じルールで動くことで、調整ミスや誤解が激減します。
調整は“仕組み化”すればトラブルが激減する
シフト調整は、店長の力量に頼るものではなく、“仕組みで行う業務”に変えることで安定します。必要人数の明確化、スキルマップによる戦力可視化、希望休と固定シフトのバランス調整など、調整を仕組みで行うと判断のブレがなくなり、誰が担当しても同じ品質のシフトが作れるようになります。仕組み化の最大のメリットは、店長が不在でも現場が回る強い組織になることです。調整の仕組みが整えば、トラブルは劇的に減り、店長自身の負担も大幅に軽減されます。調整を“勘や優しさ”で行う時代は終わり、これからは仕組みで運営する時代です。
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