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公平なシフトを作るための「希望休・固定シフトの最適バランス」

希望休と固定シフト。この二つの運用が乱れると、どれだけ丁寧にシフトを組んでも不公平感は必ず生まれます。

実際、多くの店舗で起きている問題は、希望休が多いことでも固定シフトが強いことでもなく、「両者のバランス設計が曖昧」という一点に集約されます。

公平なシフトは店長の感覚だけでは作れません。

この記事では、希望休と固定シフトをどう最適に組み合わせれば、誰にとっても納得感の高いシフトになるのか、明日から使える実践的な基準として整理します。

目次

希望休が多い店で起きる“3つの不公平”

埋まる人・埋まらない人の偏り

希望休が多い店舗でまず起きるのが、特定の人に勤務が偏る問題です。希望休を遠慮なく出すスタッフと、控えめに出すスタッフが混在すると、後者ばかりがシフトの穴埋めに回されます。

表面上は「全員希望休を出しているだけ」に見えますが、実際には提出姿勢の違いがそのまま不公平につながります。また、必要人数が確保できない日が増えるほど、真面目で責任感の強いスタッフに負担が集中してしまいます。

本人の能力や意欲とは関係なく、希望休の出し方だけで勤務量が変わってしまうという構造的な不公平が生まれやすくなります。

土日希望が集中して働き方に差が出る

土日や連休など、誰もが休みたいタイミングには希望が集中します。全員の希望を同じレベルで受け入れると、「毎週のように土日勤務のメンバー」と「ほとんど土日に入らないメンバー」が生まれてしまいます。

これは本人のスキルや貢献度とは関係なく発生するため、「なぜ自分だけ…」という不満が蓄積しやすくなります。また、土日は売上も業務負荷も大きいため、そこに固定的に入るスタッフほど消耗しやすくなります。

シフトは店舗全体の公平性が求められるのに、希望休の運用ひとつで働き方が極端に分裂してしまいます。これを放置すると離職やチーム崩壊につながる危険があります。

ベテランが負担を背負いがち

希望休が多い店では、最終的に「ベテランが穴を埋める」という構図になりやすいです。ベテランはどのポジションでも対応できるため、店長としては頼りにしたくなります。

しかし、その状態が続くと「結局いつも自分が調整役になっている」という不満を持ちやすくなります。さらに、ベテラン自身も本当は休みたい日があるのに、希望を出しづらくなることが多く、精神的な負担まで背負うことになってしまいます。結果として、経験豊富で戦力になるスタッフほど疲弊し、離脱リスクが高まります。

希望休は全員に同じ条件で運用されるべきですが、ルールが曖昧なままだと、戦力が高い人ほど犠牲になってしまいます。

公平性を守るための基本原則

「希望休=無制限」をやめる

希望休を「好きなだけ出していい」という運用にすると、必ず不公平が生まれます。遠慮なく多く出す人と、周りに気を使って控えめに出す人が混在するため、勤務量が偏りやすくなるためです。

また、希望休の数が増えすぎると、店として必要な人数が確保できない日が発生し、特定のスタッフに負荷が集中してしまいます。

公平性を守るためには、希望休の数に一定の枠や目安を設け、全員が同じ条件で提出できる状態をつくることが大切です。運用ルールが明確になるだけで不公平感は大幅に減ります。

固定シフトは“例外”ではなく“設計”

固定シフトを「特定の人だけの特権」として扱う店は少なくありません。しかし、本来の固定シフトは例外ではなく、勤務設計の一部として計画的に組み込むべきものです。

毎週同じ時間帯にスキルの高いスタッフを配置することで、業務の安定性が上がり、新人の育成環境も整いやすくなります。

固定シフトを感覚で許可するのではなく、必要なポジションやスキルに基づいて設定することで、誰にとっても納得度の高い運用になります。固定シフトは公平性を保つための“設計”であることを理解する必要があります。

全員の勤務条件を同じ土俵に乗せる

公平なシフトを作るためには、まず全員の勤務条件を同じ基準で扱うことが欠かせません。

たとえば、「学生だから土日は出られない」「主婦だから夕方しか無理」という前提を個別に優先しすぎると、シフトが複雑化し、不公平感が生まれます。もちろん生活背景を無視するわけではありませんが、全員を例外扱いしてしまうと、店全体の勤務調整が成立しません。

重要なのは、まず共通のルール上に全員を乗せ、その上で個別事情を調整することです。これにより、誰かだけ得をしたり損をしたりする構造を避けられます。

希望休の最適な運用ルール

月○日までの提出制

希望休を公平に扱うためには、まず「いつまでに提出するか」を明確に決める必要があります。提出期限が曖昧だと、早く出した人が優先され、遅く出した人が不利になるなど、不公平が生まれやすくなります。

また、シフト作成が直前まで進まないため、店長側の負担も増えます。提出期限は「毎月10日まで」など、全員が覚えやすいルールにするのが理想です。

提出日が統一されると、希望休の集計が一気にスムーズになり、作成側のストレスも減ります。公平性と効率性を両立させるための、もっとも基本的なルールです。

提出理由は不要にする(揉め事の回避)

希望休に理由を書かせると、「この理由は妥当なのか?」「あの人の理由は優遇されていないか?」など、判断の基準がブレてトラブルの火種になります。理由の妥当性を比較すると、店長が“審査員”の立場になってしまい、不必要な対立を生むこともあります。

公平性を保つためには、「希望休は理由不要」とするのが最もシンプルで強いルールです。理由が不要であれば、スタッフは遠慮なく提出でき、店長も内容の優劣を判断する必要がなくなります。

運用の透明性が高まり、揉め事も避けられるため、現場が非常に安定します。

繁忙期だけは“希望休制限”を導入する方法

繁忙期だけ希望休を制限する運用は、多くの店で機能しやすい方法です。ただし、制限の仕方を誤ると「この時期だけ厳しくなるのは不公平」という感情を生むため、事前説明と基準の明確化が重要になります。

例えば「12月は一人あたり希望休は1日まで」「連休中は希望休不可」など、店舗の状況に合わせて上限を設定します。繁忙期に制限を設ける代わりに、閑散期は希望休を柔軟に受け入れるなど、メリハリをつけた運用にすると納得感が高まります。

繁忙期の制限は店舗維持のために必要な措置であり、同時に公平性を守る効果もあります。

固定シフトの考え方とメリット

スキルレベルで固定化する

固定シフトは、単なる「希望」や「お願い」ではなく、店舗の運営に必要なスキルを基準にして決めることが重要です。特に、ピーク帯や仕込みの山場など、作業品質が落ちると大きな影響が出る時間帯には、一定のスキルレベルを持つスタッフを固定で配置するメリットがあります。

スキル基準で固定化すれば、「特定の人だけ優遇されている」という不満も起きにくくなります。

また、固定枠があることで新人の育成も安定し、毎週同じ熟練者から指導を受けられる環境が整います。店舗全体のパフォーマンスを安定させるうえで、スキル基準の固定化は非常に有効です。

毎週同じ時間に入る“安定メンバー”を作る

固定シフトを運用するときの大きなメリットの一つが、「毎週同じ時間帯に入る安定メンバーがいる」ことです。

安定メンバーがいると、役割分担が定着し、毎回業務説明をしなくてもスムーズに作業が回ります。新人にとっても、毎回同じ人が近くにいることで安心して働けるため、育成コストが下がります。

また、店長としても、「この時間帯はこのチームで大丈夫」という確信を持てるため、急なトラブル対応にも強いシフトが作れます。安定メンバーの存在は、現場のストレスを大幅に減らします。

入れ替わりがあっても崩れにくいシフト設計

固定シフトを前提にした勤務設計は、スタッフの入れ替わりにも強くなります。アルバイトの離職は避けられないものですが、固定枠が明確になっていれば、新メンバーをどこに配置すれば良いかが判断しやすく、シフトが崩れにくくなります。

また、固定メンバーが担当している時間帯や役割が明文化されているため、引き継ぎもスムーズに行えます。結果として、新人が入った時期でも、店舗全体のパフォーマンスが大きく落ちず、運営の安定性を保つことができます。

固定シフトは“辞める人が出ても崩れにくい店”を作るための重要な仕組みです。

希望休と固定シフトの“最適バランス”の決め方

まず“固定”を決めて“希望休”を上に乗せる

公平なシフトを作るための基本は、「希望休から組み始めない」ことです。先に固定シフトを決めることで、店舗運営に必要な最低限の骨格が整い、その上で希望休を調整する形になります。これを逆にすると、希望休が先に埋まり、必要な時間帯に人が配置できなくなり、最終的に負担が特定の人に偏ります。固定→希望休の順序で組み立てると、誰かの希望が全体を崩すこともなく、店舗全体の公平性が保たれます。この順番は店長の負担も大きく軽減するため、最も現実的で再現性の高い方法です。

公平性は“個人”ではなく“店舗全体”で見る

シフトの公平性を判断するときにやりがちなのが、「個人ごとの希望休の通り具合」だけを見てしまうことです。しかし、公平性は個人単位ではなく、店舗全体のバランスで捉える必要があります。特定の人の希望を完全に叶えても、他のスタッフが過度に負担を背負うのであれば、それは公平ではありません。重要なのは、「誰かが得をしすぎない」「誰かが損をしすぎない」という、全体で見たときのバランスです。店長がこの視点を持つだけで、希望休の扱い方が大きく変わり、不満の少ないシフトを組むことができます。

実例:15名アルバイト店の最適黄金比

例えば、15名程度のアルバイトが在籍する飲食店の場合、最も安定しやすい比率は「固定シフト6~7割、希望休3~4割」です。固定シフトで基盤を作り、残りの枠を希望休で微調整するイメージです。このバランスだと、運営に必要なスキルの担保と、スタッフの希望の両立がしやすく、全体の不満も出にくくなります。固定の比率が低すぎるとシフトが毎月崩れ、逆に固定を強くしすぎると柔軟性が失われます。店舗の規模やスタッフ構成によって多少の調整は必要ですが、この比率は多くの現場で再現性の高い黄金比と言えます。

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